ぱん子のブログ

がんばりすぎない、ゆるっとしたブログ

この小説、何回読んだだろうシリーズ【ちょっと今から仕事やめてくる】

ブラック企業での長時間労働に心身共に疲れ果て
無意識にホームから線路に飛び込もうとした隆は、同級生の「ヤマモト」と名乗る男に助けられこのお話は始まります。

主人公の隆は中堅の印刷会社の営業職として働いています。
朝6時起床、6時46分に家をでる。21時15分退勤、22時53分帰宅、25時就寝。これを繰り返し×6日間

土日休みだが土曜日出勤は当たり前。唯一の日曜休みの上司からの電話で叩き起こされる。
2週間ぶっ通しで働き、眠いのかお腹が減っているのかわからないくらいに体調はずっと最悪ない状態。

へとへとで家に到着しても数時間後には会社に向かう電車に揺られている毎日に押しつぶされそうになる隆。

こんな会社入るんじゃなかった、こんな会社だと思わなかった、今すぐ辞めてやりたいと隆は思います。
でも同時にそんなすぐに会社を辞められるわけない。半年で辞めたやつ、いったいどこの会社が雇ってくれるんだ。とも思っているのです

とある日、自宅へ帰るためにホームで電車を待っていると、上司からの電話を受けます。
一気に憂鬱な気分になる隆。
このまま気を失ったらホームから落ちるんだろうか、落ちたら明日会社に行かなくて済むな、そんなことをぼーっと考えていると本当に線路に落ちそうになる隆。するといきなり隆の腕はホーム側に引っ張られます。
「久しぶりやな!俺や俺、ヤマモトや」と歯磨き粉のコマーシャルのようなにかっとした笑顔を見せた男。
これが同級生「ヤマモト」との出会いでした。

突然であった同級生の「ヤマモト」と食事に行ったり、休日に出かけたりするようになり、隆はだんだんと気持ちが上向いていき仕事にも自信がでてきます。

しかし物事はそううまくは進みません。
せっかく受注目前まで行きかけていた大きな仕事で隆はありえない「ミス」をしてしまうのです。

それをきっかけに担当からは外され、外回りをすることも禁止されます。
部長からは「給料泥棒」「数字の取れない奴はごみ以下だ」など、人格否定され続け、同僚も関わりたくないとばかりに隆に全く話かけなくなり、隆は会社の中で孤立していきます。
まるでそこにいないかのようになっていくのです。

そんな生活の中で隆は限界を迎えます。やっぱり自分はダメな人間なんだ。生きている価値のない人間だと思うのです。
なんで社会でやっていけると思ったのか、なんで営業なんて選んだのか。
学生時代の理由もなく自信に満ち溢れていた自分の愚かさを恨む隆。

しかし「ミス」は隆のせいではありませんでした。
隆が慕っていた五十嵐先輩が仕事がうまくいっている隆に嫉妬し、発注書の数量を書き換えたのです。

五十嵐先輩は隆に言います。
「この世界は数字の取り合い、蹴落としあいなんだよ。入って半年の新人のお前が大型契約をとってきたら俺はその倍を期待されるんだ。お前には緊張感がないんだよ。そんなんでやっていけるような世界じゃないんだ」

隆はここまで言われても怒りませんでした。
むしろあんなに穏やかで優しかった五十嵐先輩をこんな風にさせてしまったのは自分だと責めるのです。
そして部長に言われた言葉を思い出します。
「お前は人を怒らせることだけは天才だな」

やっぱり社会に出てはいけない人間だったんだ・・・。

月曜日の朝は死にたくなる。
火曜日の朝は何も考えたくない。
水曜日の朝は一番しんどい
木曜日の朝は少し楽になる
金曜日の朝は少しうれしい
土曜日の朝は一番幸せ
日曜日の朝は少し幸せ

これは隆が作った一週間の歌

しかしこの歌はもうループしない。月曜日の朝はもうこない。
五十嵐先輩の件で、隆は自分の人生に幕を下ろそうと会社の屋上に向かいます。
南京錠を壊し、フェンスの扉を開け、屋上のふちに上り、ただ風に身を任せる隆。

「気持ちよさそうやな」
その声にふと我に返ります。そこには「ヤマモト」がいるのです。

「ヤマモト」は静かに涙を流し隆を屋上のふちから優しく戻します。
そして隆に質問し始めます。
「隆、人生はだれのためにあると思う?」 と。

隆は自分のため、と答えます。

ヤマモトは半分は自分のためだといます。
そして、もう半分はお前を大切に思ってくれる人のためにあると伝えます。

ヤマモトは続けます。
「自分の気持ちばかり考えているけど、一回でも残された者の気持ちを考えたことがあるか?なんで助けてあげられなかったのかって一生後悔しながら生きていく人間の気持ちを考えたことがあるか?」

ここはとてもぐっときました。
まだ20代の前半のころに、仕事も恋愛も何もかもうまくいかなくて、毎日生活していくことが本当に嫌な時期がありました。
まともにお金も稼げず、親に楽させてあげることもできず、ましては社会人になってもまだ親なしでは生きていかなかった。恋愛面でもだれにも選ばれず必要とされてないと感じていた時期。

何を血迷ったかそんな勇気もないのに、死のうとしたことがありました。
その時に母親に「何にもなくていいから。生きててくれるだけでいいから。」と泣きながら言われたことをこの場面を読んでいて思い出しました。

ヤマモトのおかげて絶望の淵から戻ってこれた隆は会社を辞める決意をします。
しばらくの間休んでいた隆が急に現れ、「辞める」と言い出すもんだから部長は怒涛の勢いで怒鳴り散らします。

しかし隆は負けずに言います。
「自分には世界を変えることなんでできない。でも変えられるものが一つだけある。それは自分の人生だ。
まだ何をしたいのかもわからない。でも自分にうそをつかずに生きていく、笑っていきていく、自分を心配してくれる両親を大切にして生きていく。
それだけでいいんです。今の僕にはそれがすべてなんです」

これは大人になればなるほど麻痺してしまうけど、忘れてはいけない大切なことだと思いました。
年を重ねるほどに、生活の為、家族のために働いて、自分の気持ちを押し殺しながら生きていくすべを大人は身に着けてしまっていると思います。
それはそれで大切なことではあるけど、それが原因で自分自身を不幸せにしてしまっては周りで見ている家族や友達は辛いですよね。
だから周りを大切にするのと同じくらいに自分のことも大切にしたいと、この隆のセリフを読んで思うことができました。

次回は隆を救ったヤマモトについて書きたいと思います。
今日はこれで失礼します。
では